子どもたちが考える「補聴器の未来図」選考委員会
委員長 大沼直紀 先生
(国立大学法人筑波技術大学 名誉教授・元学長)
第2回目となる「補聴器の未来図」作品展には日本全国から520点の応募がありました。いずれも補聴器装用当事者である子どもならではの創造性のある作品でした。選考委員会では一つひとつの力作に魅了されながら慎重に審査した結果、その中から特に優れた5作品に「金賞」を、10作品に「銀賞」を、55作品に「銅賞」を授与することにいたしました。また「学校賞」には、数多くの作品制作に取り組まれた大阪府立生野聴覚支援学校と、優れた作品の数が最も多かった長野県立長野ろう学校の2校が選ばれました。
補聴器が音声を補償してくれるだけでなく、スマートフォンと連動して文字や画像、手話などの視覚的手がかりを付加表示してくれるような多機能型情報保障機器としての役割に着目する作品が多く見られました。電池を交換する必要のない、発電機能のある省エネ補聴器などにも、子どもたちをとりまく今日の社会や文化が反映されています。
より快適な装着性やデザインを補聴器に期待する作品も多くありました。シール型や透明補聴器など目立たないことを求める一方で、環境に合わせてきれいに光る自動変色補聴器など、装着を表に出して主張する補聴器を描いた作品も少なくありません。水泳中も外さないで使える防水補聴器、音楽がよく聞こえる補聴器、英語を日本語音声に変換してくれる補聴器など、学習上の希望を込めた作品もありました。
日頃から子どもたちは補聴器の自己管理などで気を使うことが多いのでしょう。頻繁に作り替えしなくても耳にフィットするイヤモールドなど、親に負担をかけまいとする心遣いが表れています。さらに、今までにない超能力を補聴器に持たせ、子どもの願望を未来の補聴器に託そうとする作品も少なくありません。犬や猫と話せる補聴器。相手の心や気持ちが伝わり合える補聴器などです。
補聴器は単に聞こえをよくするための機器ではなく、聴覚障害児の育ち方・学び方・生き方に広く影響を及ぼすものです。子どもたちは、一生を通じて多様な機種の補聴器を何台も使い続けます。実は補聴器の“最多・最長のユーザー”は聴覚障害児なのです。ですからこの子どもたちこそが補聴器の未来図を描くに最もふさわしく、彼らが描く夢のなかに補聴器がこれから発展すべき方向性が秘められているのだと実感させられます。また同時に、高齢難聴者のための補聴器のあり方についての貴重なヒントも子どもたちの発想から得られそうです。
本フォーラム会場には、応募された全ての作品を展示してあります。「補聴器の未来図」を通して、幼児・児童・生徒の補聴器をめぐる日々の想いと補聴器への期待をお汲み取りいただき、ユニークな発想をご鑑賞いただければ幸いに存じます。